2023 年 9 月 30 日公開

学校の運動会は『春』or『秋』?!

学校の運動会は『春』or『秋』?!

今週末も運動会を開催される学校は多いのではないでしょうか?


保育園、幼稚園、小・中学校などで行われる運動会は、子どもの成長を親が確認できる行事ですよね。


私の幼少期は秋の開催が普通でしたが、近年では春に開催されるところも多いようです。


なぜ、春に開催されるようになったのかを探ってみたいと思います。






運動会の始まりはいつから?

今年は10月の第二月曜日11日は「スポーツの日」ではなく、平日ですが(東京オリンピック開催に伴い7月に移動した為:関連記事)1966年に国民の休日として制定された「体育の日」は2000年のハッピーマンデー制度適用まで10月10日で固定されていました。


体育の日=秋であり、体育の象徴とも言える「運動会」を秋の行事と考えている方は多いと思います。


運動会は明治時代から始まる

近代スポーツ(ヨーロッパ近代の合理主義的な発想によって整備・統一されたスポーツ)に日本人が触れ始めたのは明治時代の頃からと言われています。政府が近代化を目指し設置した学校に、欧米から招かれた教師が指導したことで日本人に広まっていきました。


東京・築地に創設された海軍兵学寮には、英国海軍顧問団のアーチボルド・ダグラス中佐が赴任していました。中佐は馬術を教えていましたが、1873(明治6)年に陸上種目を競う『競闘遊戯会』を実施したのです。これが、日本における運動会の原型だと言われています。


また同時期に、虎ノ門にあった東京大学工学部の前身・工部省工学寮においても、スコットランド人技師の指導でクリケットやベースボールなどが行われたという記録があります。外国人に劣らない体格を求めていた明治政府は、欧米に由来する競技の導入に積極的でした。


そして、これらの競技会が運動会のベースとなったようです。



秋に運動会が開催されるきっかけは東京オリンピック以降

明治時代に学校教育の中で始まった競技会(運動会)の開催時期は、各学校や地域によってまちまちでした。


運動会が秋の行事として根付いていった理由のひとつは、農業の閑散期であることが大きな理由だと言われています。


農作業においては、子どもも貴重な労働力だったため、秋の収穫が一段落した時期に運動会を実施する学校が増えたそう。


また、1964年の東京オリンピックが秋に開催されたことも、運動会を秋に行う風潮に拍車をかけました。かつて体育の日だった10月10日は、東京オリンピックの開会式の日でもあります。


運動会開催は春と秋どちらが多いの?

歴史的には秋の開催が主流だった運動会。


近年では地域や学校によって考え方が異なり、春か秋のどちらかで運動会が行われています。


春と秋のどちらが多いのでしょうか。

1990年代以降に春の開催が増加

元号が平成に変わった頃を境に、運動会は春に開催されることが多くなりました。


主な理由は、行事が集中するのを避け、できるだけ授業時間を確保しようとするためです。学校教育の週5日制が導入されてきたのもこのあたりからです。


また、中学受験を目指す家庭が増えた都心部で、「秋の開催は見直してほしい」と保護者からの要望が強まったことも要因の一つだとも言われています。


10月は受験勉強の追い込み時期ととらえる家庭が多くあり、勉強に身を入れさせたい保護者の思いのほか、怪我などが受験に大きく響くことを危惧した意見です。




地域によって異なる開催時期

2019年5月25日付の毎日新聞では、『運動会の開催時期』に関する記事を掲載されています。


記事の内容は、小学校の運動会が春と秋どちらに多く行われているのかについて、大同大学の渡辺慎一教授と名城大学の石井仁教授が合同で調査したものです。


記事内では、13~15年の全国の調査結果を見ると、「7月以前の「春」開催が54.3%、8月以降の「秋」開催が45.7%」でした。


ただし、都道府県別では、地域差が大きく現れるとも報じています。


北海道・青森・岩手・宮城・秋田・福島・新潟では、春に開催する学校の割合が90%を超えており、反対に群馬・山梨・滋賀・愛媛・宮崎・鹿児島・沖縄では、90%以上が秋開催だったです。北日本の方が春開催の学校が多いようです。
※毎日新聞『「運動会」といえば…「春」それとも「秋」 地域差くっきり』(2019年5月25日付)より引用


これは前述した農作業(稲刈りなど)や天候(気温)のことも関係があるようです。



秋の運動会のメリットとデメリット

メリット

クラスの団結力・連帯意識が強いことが挙げられるでしょう。


春開催の場合、クラスを編成したてで児童・生徒同士の調和や連帯感は未発達です。

それは、年齢が低いほどに当てはまります。


クラスメイトと一定の時間を過ごし、ある程度の関係性が築かれた秋に運動会を開催する方が、連帯感や団結力を持って参加出来ることがメリットでしょう。

デメリット

デメリットとしては、天候の問題があります。


日本の秋は台風の発生が春に比べると多く、また「女心と秋の空」とことわざにもあるように移動性高気圧と温帯低気圧が周期的に日本を通過することで、秋晴れの日があったかと思うと数日後には雨になってしまう、そんな変わりやすい天気で運動会の日程が延期や中止になってしまう恐れがあることです。



秋から春に開催されるようになってきた理由

熱中症対策が大きな要因

春に運動会を行うようになった大きな理由として、『熱中症対策』が挙げられます。


地球温暖化に伴って、近年の日本の夏の暑さと残暑の厳しさは、身体にとって危険とも言えるレベルです。


熱中症の患者数も、年々増加の一途をたどっています。


熱中症に関しては、湿度が高く残暑が厳しい9~10月に比べて、春に運動会を実施することでリスクを低下させられます。


春ももちろん熱中症の危険は伴いますが、秋に比べて比較的気温も低いことから対処しやすいでしょう。


特に小学校では低学年の児童は6歳~12歳と年齢の幅が大きく、安全な運動会の開催への配慮は不可欠です。


秋は他のイベントが多い

秋は、『スポーツの秋』以外にも『芸術の秋』『食欲の秋』などと言われます。


それだけに、秋にはさまざまなイベントが目白押しです。


学校においても合唱や合奏などの各種発表会をはじめ、文化祭や学芸会、修学旅行などが行われます。


そこに運動会が加わることを考えると、秋がいかに忙しい時期か分かるでしょう。


数多くのイベントの合間を縫って開催するよりも、春に運動会をすることで年間行事のバランスを取るという意味合いもあるようです。





◆合同会社ニュートラル:https://neutral-shinagawa.co.jp/

この記事を書いた人

矢部 峻一

『イートラスト株式会社 テクニカルチーム 主任/ B-rise運営事務局 副局長』
飲食業界で現場・SV・マーケティングを経験し、2014年イートラスト株式会社へ入社。ディレクター業務・カスタマーサポート業務を経て、現在はSEOやホームページ運用全般を請け負う「テクニカルチーム」を立ち上げ、責任者を担う。飲食業界に携わっていたこともあり、サービス業様へのWebマーケティング・SEO/MEOで貢献していくため、日々新しい試みを模索している最中です。

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