ボタンは男性は右、女性は左。なぜボタンの位置が男女で逆なの?

私たちが毎日身に着けるシャツやコート。その「ボタンの位置」に、ある“違い”があることに気づいていますか?
実は、男性服は右側にボタン、女性服は左側という決まりが、現在でも多くの衣類で続いています。
でも、なぜそんな違いが生まれたのでしょうか?
実用性?文化?ファッションの流行?
今回は、普段なにげなく着ている服の奥に隠された、意外な歴史と背景をご紹介します。
男性は「自分で着る」、女性は「着せてもらう」
このボタン位置のルーツは、中世ヨーロッパの貴族階級の暮らしにあります。
当時の男性は、自ら衣服を着用することが一般的であったため、右利きの人がボタンを留めやすいように、右側にボタン、左側にボタンホールという配置がなされました。
一方、女性の衣服は状況が異なります。貴族階級の女性たちは、日々の着替えを侍女や使用人に手伝ってもらうことが一般的であり、その際、相手に向かい合った状態で服を着せやすくするために、左側にボタンが配置されるようになったと考えられています。
つまり、男性服は「着る人」の利便性、女性服は「着せる人」の利便性を基準に設計されていたというわけです。
赤ちゃんと向き合う母親のため?もう一つの説
他にも、興味深い説があります。
母親が赤ちゃんを左腕で抱きながら、右手で服を開けやすいように、女性の服は左前に作られたという話です。
これは、母子の絆や生活習慣が服の形に影響したという説で、非常に人間味がありますね。
もちろん、これが全ての理由とは言い切れませんが、服のデザインにはこうした日常のしぐさや文化的背景が反映されていることが多いのです。
実用性より“伝統”が優先される現代の服作り
では、現代はどうでしょうか?
ほとんどの人が自分で服を着る時代になった今、男女のボタンの違いに実用的な意味はほとんどありません。
それでもなお、このルールはシャツやジャケット、コートなどの多くの衣類で守られています。
その理由は、ファッションが「伝統」や「文化」を重んじる世界だから。
ボタンの配置ひとつとっても、何世紀にもわたる習慣やデザインコードが受け継がれているのです。
また、男女の服の区別をわかりやすくするため、という意図も一部にはあるようです。
日本の「右前・左前」との共通点

ちなみに、日本の着物文化にも似た考え方があります。
生きている人は「右前」、つまり右側の襟が上にくるように着ます。
逆に「左前」は亡くなった方に着せる喪服の形。
洋服の話とは少し違いますが、衣服の合わせには“意味”があるという点では共通しています。
文化が違っても、服が“ただの布”ではなく、その人の生活や立場を映し出すものだということが伝わってきます。
まとめ
普段、何気なくシャツのボタンを留めているだけでは気づかないかもしれません。
でも、その配置一つにも歴史、習慣、文化、そして人々の暮らしが反映されていることを知ると、ちょっと見方が変わってきませんか?
ファッションは単なる「おしゃれ」ではなく、当時の暮らしや価値観まで想像できる「時代を語るメディア」とも言える存在なのです。