大相撲のまわしの謎を徹底解説!

大相撲の土俵上で、力士たちが身にまとう唯一の「正装」であり「武器」。それがまわし(廻し)です。
一見するとただの太い帯のように見えますが、そこには数千年の歴史、厳格な階級社会のルール、そして科学的な合理性が凝縮されています。
今回は、知っているようで知らない「まわしの謎」について、その規定から意外な裏話まで徹底解説します。
まわしの基本:長さと重さの意外な真実
まず驚くべきは、その「サイズ感」です。力士が締めているまわしは、広げると想像を絶する長さになります。
規格とサイズ
長さ
一般的に、力士のウエストの約7倍から10倍が必要とされます。
幕内力士であれば、およそ13メートルから15メートル。
ビル5階分に相当する長さの一本の布を、体に巻き付けているのです。
幅
約45センチメートルから80センチメートル。
これを二つ折り、または三つ折りにして使用します。
重さ
素材や厚みにもよりますが、締め終わった状態のまわしは4kgから5kg、水分や砂を吸うとさらに重くなります。

素材のこだわり
まわしの素材は、力士の階級によって明確に使い分けられています。
関取(十両以上)
「繻子(しゅす)」と呼ばれる、光沢のある絹製。
幕下以下(力士養成員)
「雲斎(うんさい)」と呼ばれる、丈夫な綿製。
色のルールとは?なぜ「黒」と「紺」が主流なのか?
テレビで見る本場所の土俵。
力士たちのまわしの色は、実は非常に厳格に決められています。
稽古場では全員「白」
階級に関わらず、稽古場で使う「稽古まわし」は、綿製の白いものと決まっています。
これは「泥にまみれて強くなる」という精神性の象徴でもあります。
本場所での「色」の格差
幕下以下
本場所でも「黒の綿まわし」一択です。
色気を出して他の色を使うことは許されません。
関取(十両以上)
ここで初めて「カラーまわし」が解禁されます。
ただし、伝統的に「紺、紫、黒、えんじ」といった深みのある色が推奨されており、あまりに奇抜な色は避けられる傾向にあります。
なぜ昔の力士はみんな「紫」だったのか?
江戸時代、紫は高貴な色とされ、幕内力士の特権でした。
現代でも、締め込み(本場所用まわし)に紫系統が多いのはその名残です。
「締め込み」にまつわる驚愕のタブー
まわしは「洗ってはいけない?」
大相撲ファン以外が最も驚くルール、それが「まわしは洗わない」という習慣です。
これは不潔にしているわけではなく、明確な理由があります。
縁起を担ぐ
「水に流さない」というゲン担ぎ。
強度を保つ
絹製の締め込みは、水洗いすると生地が柔らかくなりすぎてしまい、相手に指を入れられやすくなったり、締め心地が変わって怪我の原因になったりします。
しなやかさを出す
稽古でかいた汗と土が混ざり、天日干しを繰り返すことで、まわしは独特の硬さと粘り強さを持ち、体に馴染んでいきます。
手入れとしては、使用後に日光に当ててしっかり乾燥させ、ブラシで砂を落とすのが基本です。

まわしの前についている「ヒラヒラ」の正体は?
力士のまわしの前についている、あの硬い紐のようなもの。
あれは「下がり(さがり)」と呼ばれます。
下がりのルール
- 素材: 絹の紐を糊でカチカチに固めたものです。
- 本数: 奇数が縁起が良いとされ、通常13本から17本程度。
- 役割: 実用的な意味はなく、あくまで「装飾」です。しかし、取組中にこれが落ちることはよくあります。落ちても勝負には関係ありませんが、行司が隙を見て土俵の外へ捨てます。
幕下以下の力士の場合、この下がりは糊で固められておらず、ただの布紐(通称:バラ下がり)です。
ここでも階級の差が明確に現れています。
勝負を分ける「まわしの締め方」とは
まわしの締め具合は、力士の生命線です。
「硬く締める」力士
相手に指を入れさせないため、あるいは自分の腰を浮かされないために、呼吸が止まるほどキツく締めます。
「緩く締める」力士
相手の力をいなしたり、まわしを伸びさせて相手の重心を狂わせたりする戦術(「伸びるまわし」)をとる場合に、あえて少し余裕を持たせることがあります。
しかし、あまりに緩すぎて取組中に外れてしまうと、「不浄負け(ふじょうまけ)」という、相撲界で最も不名誉な反則負けが適用されます。
これは、まわしが外れて「露出」してしまうことを防ぐための厳格なルールです。
まわしが持つ「科学的」な役割
まわしは単なる伝統衣装ではなく、格闘技の道具として極めて合理的です。
怪我の防止
腰回りを強力に固定することで、重い体重を支える脊椎や骨盤を保護する「パワーベルト」の役割を果たしています。
力の伝達
相撲は「引き」や「投げ」の際、相手のまわしを起点にして自分のパワーを伝えます。
もし裸であれば、指が滑ってしまい、あれほどのダイナミックな投げ技は不可能です。
公平性
誰もが同じ条件の「持ち手」を常に晒していることで、技術の差が明確に出るようになっています。

まわしは力士の「誇り」そのもの
新弟子として相撲部屋の門を叩いた若者は、まず真っ白な綿のまわしを泥だらけにすることから始めます。
そして、厳しい稽古に耐え、関取(十両)に昇進したとき、初めて色鮮やかな絹の「締め込み」を許されるのです。
力士にとって、まわしの材質や色が変わることは、人生が変わることを意味します。
土俵上で光り輝く締め込みは、彼らが流した血と汗、そして積み上げた星の結晶です。
次に相撲を観戦する際は、ぜひ力士の「腰元」に注目してみてください。
そこには、一人一人の苦労とプライドが、15メートルの布の中に固く、力強く巻き込まれているはずです。
もしも「まわし」が欲しくなったら?
一般的に市販されている「本格的なまわし」は、専門の業者が制作しており、価格は数万円から、高級な絹の締め込みになると数十万円から100万円以上することもあります。
多くの場合、後援会からの贈り物として力士に届けられます。
まさに「一生モノ」の装備なのです。
この記事を書いた人
『イートラスト株式会社 総合サポート本部 部長/ B-rise運営事務局 副局長』
飲食業界で現場・SV・マーケティングを経験し、2014年イートラスト株式会社へ入社。ディレクター業務・カスタマーサポート業務を経て、現在はSEOやホームページ運用全般を請け負う「テクニカルチーム」を立ち上げ、責任者を担う。飲食業界に携わっていたこともあり、サービス業様へのWebマーケティング・SEO/MEOで貢献していくため、日々新しい試みを模索している最中です。


