【自転車ロードレースの魅力】自転車ロードレースのここが凄い!
『ツール・ド・フランス』って知っていますか?
一度は名前を聞いたことがあるかもしれませんが、これは世界最高峰の自転車ロードレースの大会の名前です。
最近は一般の方が通勤で乗るほどメジャーにもなったロードバイクで、およそ3週間にもわたってほぼ毎日レースをする大会で、同じような形式の『ジロ・デ・イタリア(イタリア)』『ブエルタ・ア・エスパーニャ(スペイン)』と並んで世界3大大会「グランツール」と呼ばれています。
日本では自転車レースというと競輪のイメージが強い方が多く、地上波で放送されることもないので、そもそも自転車ロードレースをご覧になったことがない方もいらっしゃると思います。
そんな方に向けて、今回は自転車ロードレースの凄さと魅力を少しだけご紹介していきます!
・フィジカルの限界に挑む
まずは想像を絶する過酷さとそれを乗り越える超人的な選手たちのフィジカルです。
一例として『ツール・ド・フランス』の去年のデータで選手たちがどんな事をしているかわかりやすいように数字でご紹介します。
- ・全23日間で21ステージ(休息日は2日間)で走破距離:3,492km
- ・全日程での獲得標高(選手が登った高さ):52,230m(およそ富士山×14)
- ・平坦なステージでの平均速度:約40km/h、ゴール前は約70km/h(平均10%を超えるような山登りでも20km/h、下りでは100km/hを超えます)
- ・一日の消費カロリー約7000kcal~8500kcal(成人男性が摂取するカロリーの3.4日分)
こうやって数字にすると凄すぎて逆に想像がつかないくらいですが、これをやってのけるのが自転車選手の凄さです。
・全てはエースのために
『ツール・ド・フランス』のような何日間にもわたって競う大会では、自転車ロードレースはチーム戦でも個人戦でもあります。
通常数人(レースの規模による)のチームで参加しますが、表彰や栄誉は基本的に個人に対して行われます。
そこで、チームで一番実力のあるエース以外は基本的にアシストと呼ばれ、エースのために仕事をします。
一番大きな仕事は風除けです。
平均時速40km/h前後で走っていく選手たちにとって生身で受ける空気抵抗が一番疲労に繋がります。
そのため勝負所でエースの体力を残すためにアシストが前を走って助けてあげるのです。
他にも長丁場のレースの中で隊列を離れて補給食を取りに行ってあげたり、エースのタイヤがパンクしたらアシストが自分の自転車を渡して先に走らせ、チームの車が替えのバイクを持ってくるのを待ったり、、、全てはエースのために頑張るのです!
・チームによって、個人によって目指す目標が違う。(ステージ優勝・ポイント賞)
先程エースのためにと書きましたが、『ツール・ド・フランス』のような3週間もあるレースだと、毎日様々なコースが待ち受けているので、選手やチームによっても狙うものが異なってくるのが自転車レースの面白いところです。
もちろん毎日ステージ優勝など出来るわけもないので、その日によって様々な駆け引きが行われていくようになります。
例えば、競輪選手のような体格でゴール前の足比べ(スプリント)で爆発的なスピードを生み出せる選手がエースの場合、平坦なコースでトレインと呼ばれる隊列を組んでゴール前で勝負できるように戦略を組み立てます。
しかし、こうしたガタイのいい選手は体重が重いので逆に山岳のステージ(コース)では、集団についていけなくなります。
こうしたレースでは「クライマー」と呼ばれる身軽で心肺機能の優れた選手たちがしのぎを削ります。
それぞれの得意分野で勝負をしていく中で、選手たちは特別なジャージを懸けて争います。
・総合優勝ジャージ【黄色】・・・その日の終了時点で一番合計タイムの短い選手が着用出来る。
『ツール・ド・フランス』では、「マイヨ・ジョーヌ」と呼ばれる黄色いジャージがあり、1日でも袖を通せることがこの上ない栄誉とされています。
・スプリント賞ジャージ【緑色】・・・コースの途中や平坦なステージのゴールなどにポイントが設置され、先頭で来た人からポイントが加算される。
その時点で最もポイントが多い人が着用できる。
・山岳賞ジャージ【白地に赤い水玉】・・・コースの途中などにある坂や山を登り切った地点にポイントが設置され、先頭で来た人からポイントが加算される。
その時点で最もポイントが多い人が着用できる。
山によって難易度が設定されており、ポイント配分が異なる。
・新人賞ジャージ【白色】・・・25歳以下の選手たちの中でその時点で一番総合タイムの短い選手が着用出来る。
他にも
・世界選手権チャンピオンジャージ(アルカンシエル)・・・金メダルを取った選手が次回の開催まで大陸の数にちなんだ5色の虹色の帯のついたジャージを着用できる。期間中はこのジャージを他のレースでも着用出来る。
最も格が高いのは総合優勝(ジャージ)ですが、各ステージそれぞれ優勝者がいて、それ以外にも上記のような部門があり各選手に活躍のチャンスがあります。
・スポーツマンシップを尊ぶ不文律
自転車レースの特徴として紳士協定(暗黙の了解)が多いことです。
エースのために自己犠牲を求めるような競技性だからこそ、エース以外に活躍できるチャンスが来た時には譲ったり、利己的な行動は忌避されるわけです。一例としては、
・少人数の集団を形成して走行する場合は、先頭交代に加わらなければならない。
自転車競技において、先頭を走ることが一番疲労が溜まります。
なので、少人数で走行をするときは、他の誰かの後ろについて楽をすることは、たとえそれで好成績を残しても実力としては認められません。
まして、それで優勝した場合は、ファンや他チームから非難の対象となります。
・総合優勝を目指す選手は、ステージ優勝を譲る。
優勝は当然その日に先頭でゴールした人になりますが、自転車レースのタイムは同じ集団で走っていれば、その集団の先頭と同じタイムとして記録されます。
何日間にもわたって行われるステージレースでは、総合優勝を狙うエースたちにとってはライバルのエースに差をつけられなければ問題無く、その日のステージを先頭でゴールする必要はありません。
よって、総合優勝に影響のないレース展開の場合には、風除けをしながら一緒に集団走行に協力してくれた自チーム・他チームのアシストの選手にステージ優勝を譲り、エースは勝負に参加しない事が多いです。
・アクシデントにつけこまない。
ゴール直前のスプリント争いを除いて、優勝を争う有力選手がパンク・落車などに巻き込まれた場合、その隙をついてアタックすること(急激にペースを上げて引き離そうとすること)はマナー違反とされています。
たとえ、自分がライバルより総合タイムで負けていたとしても、ライバルがアクシデントから復帰して集団に戻ってくるまでゆっくり走って待ってあげることが良しとされています。
<アクシデントにつけこまない>の一例
https://news.jsports.co.jp/cycle/article/20190310223359/野球やサッカーなど他の競技にも不文律(暗黙の了解)がありますが、自転車レースはタイムを競う競技ながら、不文律が多い珍しい競技でもあります。
スポーツマンシップを尊び「正々堂々戦って速いやつは誰だ」と競うのがこの競技の魅力です。
・景色が最高!
これはTVなどで観戦する場合ですが、ロードレースのコース設定が様々なので、長時間見ていても景色が綺麗で飽きません!
ヨーロッパの市街地の石・レンガ造りの街並みから、川沿いの野原や花畑、アルプスの山々などみるみる景色が変わっていき、旅行したような非日常の景色を楽しむことができます。
オリンピックでは自転車ロードレースが日程の中でも早い時期に開催される事が多いのですが、これはオリンピック開催地の街並みなどを一番感じてもらえる競技だからなんだそうです。
さいごに
いかがだったでしょうか。
自転車ロードレースの楽しみ方をいろんな角度でご紹介しましたが、まだまだ一部!
観戦していくと、そこには様々な駆け引きがあり、そこにドラマがあり、語りつくせない感動が待っています。