2023 年 4 月 19 日公開
深海に潜水するための技術「飽和潜水」ってなに?

自衛隊のヘリコプターが沖縄県・宮古島周辺で行方不明になった事故で、自衛隊は「飽和潜水」と呼ばれる技術で捜索に当たっているというニュースを目にします。
今回はその「飽和潜水」に関して、一体どんなものなのか紹介していければと思います。
飽和潜水とは
飽和潜水は簡単に言うと「安全に深海に潜水する方法」です。 もう少し詳しく言うと「水深の深い場所に潜水した後、浮上した際に起こる「減圧症」を防ぐ為に、あらかじめ体内にヘリウムなどの不活性ガスを入れて安全に潜水する方法」です。
大きな目的は、水圧が原因として発生する減圧症を引き起こさないように潜水ができるところにあります。
減圧症って?

減圧症は気圧の急激な変化によって起こるものです。
主な原因としては血中窒素ガスの血管内分離によって塞栓ができ、血流が遮断されてしまうことで、 症状としては、めまいや吐き気、重症な場合は意識障害やけいれん等が発生することがあります。
自然治癒することはないため、高圧酸素療法を行う必要があります。
深く潜水していくと、水圧によって吸入するガスなどが、体の中に溶け込んでいきます。
浮上する際にはこれと逆に、体内に溶け込むガスの量が減っていきます。
溶け込んでいたガスは過飽和状態となって、気泡となって体の中に現れます。
安全に準拠している浮上の速度なら、ガスは自然に体外に排出されますが、浮上速度が速かったり、体調が悪かったりするとその気泡が塞栓を引き起こします。
飽和潜水の方法

飽和潜水はあらかじめ水圧と同等の圧力をかけ、ヘリウムなどの不活性ガスを体内に入れたのちに潜水を行います。
飽和潜水には再圧タンクと呼ばれる「タンク」と、タンクから海中に潜水するために使う「ベル」を使用することがほとんどです。
加圧の際は、高圧神経症候群などのリスクから、1m分の加圧を1分かけて行っています。
しかし100mなどの深い地点に潜水する際には、数日かけて加圧することもあるため、タンク内で生活して準備する必要があります。
また減圧にはより時間がかかり、5日程度から1週間かけて減圧していきます。
飽和潜水では、地上や船上で加圧、減圧ができるので、海中で活動するのは潜水する時のみで済みます。
飽和潜水は複数人で行うことが多く、その理由としては潜水中に何かがあった際に、 救助に向かうのに加圧すると時間がかかるからです。
潜水はかなり危険な仕事

このように潜水して捜索するにもかなりの時間を要してしまう上に、危険が伴う作業なのです。 加圧されたタンク内では、呼吸がしづらくなり、ヘリウムガスによる影響で声が変になるので、意思疎通も難しくなります。
また、加圧中に何らかの理由で加圧できなくなると、飽和していたガスが一気に体内に放出されるので、血管が破裂したり、臓器が膨張したりすることもあるそうです。
救助作業にも使われることが多い飽和潜水ですが、加圧減圧に時間がかかってしまう危険な作業ということです。
まとめ
飽和潜水は特殊なタンク内で潜水地点と同じ圧力に慣れさせ、潜水時のみ海中で作業をする。
作業後もタンク内で数日かけて減圧するので、減圧症になるリスクが少ない。
この記事を書いた人
『イートラスト株式会社 テクニカルチーム』
青森県出身。8年間、小売業界に従事しつつ趣味でライターとして活動。大手サイト(Yahoo!、朝日新聞社)の記事投稿やTokyoFMのラジオ出演の経験も。2022年にイートラストに入社。好きなものは家電、インディーズ音楽、動画編集。