「セキュリティ・クリアランス」制度とは?どんなメリットデメリットがある?
ここ数日で聞くことが多くなった「セキュリティ・クリアランス」。
政府は「セキュリティークリアランス」の制度の創設を目指して、去年2月から有識者会議で検討を進めていましたが、17日に制度の骨格に関する提言がまとまりました
今回はその「セキュリティ・クリアランス」について、どんなものでそんなメリットやデメリットがあるのかを紹介していきたいと思います。
「セキュリティ・クリアランス」とは
「セキュリティ・クリアランス」は国家機密などの情報を扱う政府職員や、関連する民間企業が職員を採用する際の判断基準となる資格です。
その人が機密情報を扱った場合、情報漏洩させたり悪用したりしないかどうかの適格性を審査するものです。
簡単にまとめると
「セキュリティ・クリアランス」とは、機密情報を扱う職員の適合性を審査するものです。
機密情報に触れる前に審査することで、アクセス可能な人間を厳選し、情報漏洩や悪用されないようにする目的があります。
アメリカなどではすでに法制化されており、ドイツや韓国など多くの先進国で導入されている資格となっています。
なぜ最近聞くようになったの?
ここ最近耳にすることが多くなった「セキュリティ・クリアランス」ですが、なぜよく聞くようになったのでしょうか。 それは令和4年5月11日に参議院本会議で法案が可決、成立し、同年5月18日に公布された「経済安全保障推進法」が大きく関係しています。
この法律は経済活動における国家の安全保障を推進するための法律で、その一環として「セキュリティ・クリアランス」があげられることが増えてきました。
そして令和5年2月4日の第4回経済安全保障推進会議にて、この「セキュリティ・クリアランス」の法制度に向けての議論が行われました。
14日の検索トレンドワードに選ばれるほど、注目を集めているものです。
特定秘密保護法との差別化
「セキュリティ・クリアランス」と同じような制度として、「特定秘密保護法」があります。 「特定秘密保護法」は2013年に施行された法律で、国家の安全にかかわる特定秘密を扱う行政機関の職員に対して調査を行うものです。
「セキュリティ・クリアランス」と「特定秘密保護法」との大きな違いは、「セキュリティ・クリアランス」の方が民間企業などを含めた、より広いところまで審査の対象としている点です。
「セキュリティ・クリアランス」のメリット
「セキュリティ・クリアランス」制度が採用されることによって、どのようなメリットがあるのでしょうか。
機密情報の持ち出しを防ぐことができる
機密情報の持ち出しはさまざまな場所で行われています。 外国籍の技術スタッフが本国に情報を流したり、退職後に転職した会社に情報を流したりするケースがあります。
日本はスパイに対する法整備が整っていないため、機密情報を持ち出しても他の国よりは軽い処分で済みます。
「セキュリティ・クリアランス」が整備されることで、情報を扱う適格性が事前に分かります。 適正に合わせて人員配置を行うことができるので、リスクを低減することが可能です。
諸外国との共同開発などに参加できる
オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカで構成される諜報同盟「ファイブ・アイズ」の加盟国を始め、ドイツや韓国などの諸外国では「セキュリティ・クリアランス」制度が導入されています。
特に「ファイブ・アイズ」は国家安全のためにインターネットの監視やほかの国の軍事活動の監視をし、その情報を共有しています。 こういったところに参加するのに、相手国からは「セキュリティ・クリアランス」の制度があるのかが重要視されます。
現状そのような制度がない日本は、参加できないことも多く、軍事情報共有はもちろん技術開発の面でも諸外国との関係を作ることができません。
また、スパイに対する制度も甘い為、諸外国は日本から情報が漏れることを懸念している場合が多いです。
「セキュリティ・クリアランス」制度を整えることにより、情報を得たり、技術革新が見込まれたりするので、大きなメリットと言えます。
外国の企業で取引するor働くチャンスが増える
日本企業や個人が外国の企業と取引する際や、勤務する際に「セキュリティ・クリアランス」がないことを理由に関係を持てない場合が多くあります。
法整備が進むことで、海外の企業との関係性もよくなり、共同開発などにもつながっていくので技術革新などに大きな影響をもたらします。
「セキュリティ・クリアランス」のデメリット
いいことが多いと思われがちな「セキュリティ・クリアランス」には、どんなデメリットがあるのでしょうか。
個人情報が漏洩する
機密情報扱いの適格性を調べるには、その人の犯罪歴や薬物使用歴、飲酒の節度や信用などの財務状況や交友関係など、多くの要素を調べた上で判断されます。 日本国民は個人情報の流出を嫌う傾向にあるので、反対派の人も数多くいます。
制約による政府の干渉が増える
新たな制度ができると、今まで働いていた人が、その仕事をできなくなったり、配送や下請けの業者との関わりも変更する必要が出てきたりする可能性があります。 その際は政府が介入することになり、政府の介入を止めることはできません。
天下りや癒着が多くなる
民間の企業にも政府の介入が多くなり、政府の人間を置いた方がいいとなると、天下り先として利用される可能性も多くなります。
また同時に政府や官僚からの多額の支援金などが横行する可能性も0ではありません。
国を守るか国民を守るか
情報社会において、情報を持つことは強みになります。 ただ、情報を収集するのは監視や調査が必要になり、国民はそれを嫌います。
今でこそ駅や電車にまで監視カメラがついていますが、少し前までは反対派が多くいました。 しかし、そのおかげで犯罪などから国民を守ることができる場合もあります。
「セキュリティ・クリアランス」制度も導入することで海外への情報流出を抑え、共同開発や情報共有で周辺国との格差を減らしていくことができます。
今後1年をめどに整備することとなっているものなので、覚えておいても損はないと思います。
この記事を書いた人
『イートラスト株式会社 テクニカルチーム』
青森県出身。8年間、小売業界に従事しつつ趣味でライターとして活動。大手サイト(Yahoo!、朝日新聞社)の記事投稿やTokyoFMのラジオ出演の経験も。2022年にイートラストに入社。好きなものは家電、インディーズ音楽、動画編集。