2023 年 8 月 2 日公開

トヨタも採用する「なぜなぜ分析」とは?育成の現場でも有効

トヨタも採用する「なぜなぜ分析」とは?育成の現場でも有効

筆者が前職で勤めていた会社は、育成には「考え方」が大きな部分を占めており、仕事のやり方を教えるというよりは、考え方に重点を置いて育成をする。初めに入社した際は、宗教とまではいかないが、社員の多様性というよりは思考を強制するのかと思っていた。

 

6年という月日を経てそれに対する考えが変わったのと、重視されていた「なぜなぜ分析」に関して紹介していこうと思う。

 

 



なぜなぜ分析とは



なぜなぜ分析は、発生した何らかの問題(主にミス)に関して、「なぜそれが起きてしまったのか」を考え、さらにその「なぜ」の原因を考えることを繰り返すことによって、その問題の根本にある原因を探っていくものだ。

自身がいた会社では「なぜなぜ5回」と言われてそれを5回繰り返すことにより、原因を追究し、同様のミスが起きないようにしていた。多くの会社にこの考え方が広まった現在は、必ずしも5回にこだわる必要がなく、根本となる原因にたどり着くことが重要とされている。

 

 

なぜなぜ分析のメリット

なぜなぜを繰り返していくことで、根本的な原因が判明することが一番大きなメリットとなる。

例えば、「書類の提出が遅れてしまった」などという問題があった際に、なぜ遅れたのか→「担当者が忘れていた」という原因だとなったとする。多くの企業はこの時点で、その担当者のミスと決めて終了してしまう。

 

しかし、なぜなぜ分析を行っていると、なぜ担当者が忘れていたのか→「タスク一覧の管理アプリの情報が整理されておらず見逃した」→「入力方法が人により異なり、複数のやり方が存在して煩雑になっていた」などより深い部分の仕組みなどを見直すことで、同様のミスを防ぐことができる。

 

 

何回なぜなぜすべきか



もともとトヨタがこの考えを広げる際には、5回繰り返すのがいいとされていた。概ね5回で原因を特定することができるからだ。しかし、内容によっては3回で原因にたどり着くこともあり、何回やるべきかは問題によって異なる。

 

重要なのは回数というよりは、本当に根本の原因までたどり着いており、意識などの抽象的なものではなく、仕組みとして改善することができるかどうかである。

 

 

注意すべきポイント

なぜなぜ分析をやる上で注意しておきたい点がある。それは性格や性質などをもって原因を属人化させないことや意識や心理などの曖昧なものを原因にしないことだ。

 

原因を属人化するとは、「○○さんはおっちょこちょいだから」「○○さんは管理が苦手だから」などと個人の問題にして片づけることだ。そのようなやり方を続けてきた場合、根本的な原因が改善せず、同じミスが同じ人から出てしまうのはもちろん、別な人からも発生する可能性が高くなる。

そのままではずっと仕組みが改善することはなく、問題解決をすることができない。

違う人間が同様のミスをした時点で、現状の仕組みを見直さないのは成長しない組織である。

 

また、意識や心理を原因に持ってくるのもよくない。「もっと大きな声であいさつするように意識する」「同じミスがないように意識する」などという言葉をよく聞くが、意識して直るならそのミスは発生しない。意識したところで解決せず、同じことは起きやすいのでなぜなぜ分析には不向きである。

 

 

問題の解決以外にも効果がある



問題の原因究明がなぜなぜ分析の大きな目的の一つだが、育成する際にも役に立つ。ポイントとしては二つ「部下の仕事に対する意識」と「応用」である。

 

いい上司は、部下の仕事に対して意味を与える。それがやりがいにつながると、部下は能力を発揮して仕事ができるが、それができない上司の下にいる部下は、優秀ならサボるか転職するかである。

仕事に意味を与える過程で必要なのは、「なぜ?」の問いだ。「なんで○○をする必要があると思う?」「何のためにやると思う?」などの質問を繰り返すことで、仕事に対して自分なりにやりがいを見出す癖がつく。

最終的には正解はないので、自由に考えさせ自身の考えを押し付けずに考えさせる。あまりにも的外れなことを言った場合は指導すべきだが、自身で自身の仕事に価値を見出し、質の高い仕事ができるようになればそれが正解になる。

 

応用も似たようなものである。なぜするのか、何のために必要なプロセスなのかを伝えることで、仕組みや構造を理解させていく。そうするとこの場合はどうなるんだろうと、自身で考えて仕組みに則った答えを自分で出すことができる。

 

そのためには上司が仕組みを理解している必要があり、組織として仕組みが成り立っている必要がある。

 

 

 

なぜなぜ分析などをはじめとした、有名な考え方やフレームワークなどは多くある。そのほとんどは大きく成長を遂げた個人や会社の経営者などの考え方だ。もちろんすべての組織でそのやり方が合致することはないと思うが、成長を遂げた組織に学ぶべきことは多くある。何か問題に直面した時には、試してみてはいかがだろうか。

 

 


 

◆株式会社Bennuash:http://bennuash.co.jp/

この記事を書いた人

今井 晴哉

『イートラスト株式会社 テクニカルチーム』
青森県出身。8年間、小売業界に従事しつつ趣味でライターとして活動。大手サイト(Yahoo!、朝日新聞社)の記事投稿やTokyoFMのラジオ出演の経験も。2022年にイートラストに入社。好きなものは家電、インディーズ音楽、動画編集。

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